海の都の物語―ヴェネツィア共和国の一千年
読了。特にトルコとの戦いが始まったあたりから、成熟期を迎えて、最後ナポレオンに滅ぼされるまで、夢中になって読んでしまった。 1000年を超える時間を、当時のヨーロッパのどまんなかで外交と戦争を駆使しながら共和制を維持し続けたことの凄さが存分に味わえた。
特に印象に残ったのは、第12話でヴェネチィアの国力低下の原因として、かつて海運業が主産業であったために身分階層構造が固定化しなかったものが、手工業と農園経営が盛んになるにつれて「敗者復活戦」がなくなり、保守化していったことを述べたくだりだ。 しかしそれも堕落の結果ではない。著者自身が盛者必衰としかいいようがないと述べているように、1000年もの間国体を変えずに生き続けた国家が、避けられない運命をたどっただけなのだと納得させられた。
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